ひとり親style ~それぞれのかたち~ 第3回

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鳥イラスト アイコン ひとり親style ~ それぞれのかたち ~ プロフ写真
【 第3回 】 あべみちこさん (有限会社マザール 代表/企画屋執筆家)

笑顔になれる人とつながること。

有限会社マザール 代表/企画屋執筆家 あべみちこさん

 2004年、“広告企画制作業”という看板で「有限会社マザール」を設立。ひとり親Style第1回目登場の石尾さんの記事をお見せすると「石尾さんも存じあげていますよ!」と早速、交友関係の広さをうかがい知ることに。たくさんの方々と深いつながりを持つあべさんから、前向きになれるお話を伺いました。  

アイコンQ.ひとり親になったとき、どのようなことを感じ、どうしようと思いましたか?

私の場合、出産時にはすでに別居をしていました。職場的にも経済的にも、産後2ヶ月で職場復帰することが絶対でしたので、家族には反対されましたが、子どもを預けられる保育園を見つけることに必死でしたね。  産後1ヶ月の頃に、保育園の入園手続きについて役所へ問い合わせたところ「今日が申込みの締め切りなのですぐに来てください」とのこと。まだ産後間もない身体で役所へ向かい、ひとり親であること、職場は、母親になれども時短勤務などの対応もなく、来月には完全復帰しなければならないことなど、すぐにでも保育園に入らなければならない状況を話しました。しかし、「そういう嘘を言う人はたくさんいるんです」と言われ、
入園 満4カ月で保育園に入園した頃
我慢できずにその場で大喧嘩をしてしまいました。 いろいろな事情を抱えたお母さんたちが、行政の対応でいやな思いをせず、個々の状況に応じた保育園に、滞りなく入れるようにするためにはどうしたらよいか―――。  それには、当時の行政の対応がどういったものなのか、という事実を、声をあげて直接伝えることが大切ではないのかと思いたち、嘆願書と手紙を持って当時の厚生省へ出向いたり、市長へ手紙を書いたり、あちこちで現状を伝える努力をしてきました。ただ、私の場合は保育園だけではなく両親や姉一家、ベビーシッターさんなど支えてくれる人に恵まれたことは仕事を続けられる上で大きかったです。  

アイコンQ.子育てでたいへんだったことや嬉しかったことはどんなことですか?

 山へ登る私は、息子が2歳になる前から、一緒に登ってきました。歩くのが苦にならず、足腰も丈夫で、ちょっとやそっとのことでは弱音を吐かない子です。
入学 高等部入学式の頃
 現在、その高1になる息子が中学へ入学した頃、親の言うことが全く通らなくなり、それを機に私自身も体調を崩してしまったときが一番大変でした。お互い語彙も豊富なので口喧嘩も派手にぶつかりますが、取っ組み合いもしょっちゅうで、本当にいろいろ苦労がありましたよ。今は、反抗期を2人で乗り越えて、彼も少しずつ変わってきました。  中高6年間続けてサッカーのできる環境を求めて中学受験し強豪校へ入学。ところが心境の変化があり高等部ではサッカーをやらず生徒会活動を選択。今度は「生徒会長になって学校を改革したい」と言い始めました。  そうやって自分の意志で生徒会を選択したり、考えていることを言葉で伝えようとしたりしているのを見ると成長を感じるし、親の背中を見て育ってくれているな、と、素直に良かったと思えるようになりました。  今の時代、引きこもりやいじめなどが多く、問題になっていますが、彼はいつも友だちに恵まれているおかげで、そういったことにはまったく無縁で、充実した毎日を送っていることも、私にとっては救われているところです。  

アイコンQ.現在のお仕事について教えてください。

PRや編集制作、イベント企画、お母さんに役立つもの・こと・場といったくくりで企画を立てて、情報と人とのつながりを提供しています。冊子やWebサイト制作、新しいブランドのロゴマークやネーミングも考案。
講演会 2012年7月「放射能対策講演会・第二弾」は
公演と講演の2部構成でコーディネーター兼
司会進行を務めた時の様子
また、お母さんの復職相談や教育問題、美と健康の悩みなどのアドバイスを求められれば、その問題に詳しい知人や専門家を紹介したり、制度や機関を紹介したりもしています。  3.11以降は「放射能対策講演会」を何回かに渡り開催してきました。国や行政が提示しきれていない情報を、自分たちが主体となって知って、どうしていくべきかを学ぼうという目的です。一方的に安全・安心な説を押しつけるのは違うと思いますし、逆に恐怖心を扇る情報も違うはずです。 一方で、被災地の女性支援のために「ハートギフトプロジェクト」というボランティア活動にも取り組んでいます。これは被災された女性へ定期的にギフトを送り、物を提供する側と、受け取る側の個人同士の関係づくりを深める活動です。  どちらもマザールとして大切な仕事です。  今、放射能問題を考えている方も多く、放射線量計を持って測ったり、給食を拒否してお弁当を持たせたりしているお母さんもいらっしゃいますよね。私の考えでは、私たちは放射能だけではなくて、常にいろんな危険に囲まれて生活していると思っているんです。その中で、あれもこれもダメ、と否定ばかりするのではなく、どうすれば原因になるものを増やさずに、快適に過ごせるのかということを考えていて、いろいろな情報をたくさんの人と、うまく共有できる場づくりをしていこうと思っています。  人が集まれば、意見の食い違いなどでひとつにまとまらず、大変なことも多いのですが「ありがとう」と言ってもらえる仕事だからこそ、やりがいもあり、継続していける原動力となっています。  

アイコンQ.日常の生活で困ったことやその解決方法を教えてください。

コーラス隊 音楽家・秦万里子のファンクラブ「はたまり隊」
立ち上げ当初の2008年9月、横浜関内ホールで
コーラス隊として唄ったときの一コマ
日常生活といっても仕事とは表裏一体で、家計のすべては私ひとりの収入で担わなければなりません。そのうえ、離婚後間もなく両親と同居を始めたものの、家事雑事のすべてを担ってくれていた母が一昨年11月に突然他界してからは、すべて私一人でやることになり、困ったことはいっぱいあります。その中でも、特にお金のことが一番大変ですかね。  生活費に援助があるわけではないので、生活を守りながら会社を維持していくために、本気で利益を上げるということに毎日必死です。銀行の通帳を見て何度青ざめたことか…。でも、そういう苦い経験が仕事の原動力や発想力になるのだと思っています。人の痛みがわからないと、感謝される仕事はできません。  ピンチが訪れたとき、不思議と必ず仕事が舞い込み、サポートが入って乗り越えることができるのですが、それは、絶対に諦めず、自分でこうしようと望み、踏ん張っているからこその結果かもしれません。  

アイコンQ.自分の気持ちや体をリラックスさせる方法は何かありますか?

 私は、すごく片づけ魔なので部屋の掃除や服の整理整頓などをすると、心のグシャグシャが納まる気がします。気持ちに整理つけるためには目に見えるところをキレイにすると気分が変わるんですよ。  日々のタイムスケジュールですが、朝型体質なので5時半には起床し、お弁当作り。息子を起こし朝食を食べさせたら7時に送り出し、父に朝食を用意。洗濯を終わらせ9時半から17時半までが仕事。20時には夕飯を食べ21時過ぎに入浴、23時には就寝という日々を送っています。  

アイコンQ.今働きながら、子育てしている、ひとり親の方にアドバイスをお願いします。

 仕事は受け身では成り立たちません。たとえいい人と知り合えても、その先つながっていけるかは、その人自身の問題です。自らがつながりを創り上げていくことがご縁であり、次のご縁につながるのだと思います。  私は行政の支援などありませんでしたが、今こうして生きているのは、自ら積極的に動いてきたからだと思っています。生きていくためにはお金が必要で、どうしたら今、自分が持っている力を役立ててお金に換えられるのか、そういうことを考えられる「場」に足を運んでほしいと思います。
インタビュー 2008年春、くもん出版の冊子制作の一環で
4人の親子へのグループインタビューの様子
 頼りにすべきは行政主体のものだけではないはずです。とにかく、自分自身の心が元気に、笑顔になれる人が集う場所に出向くこと。実際に足を運び、話し合い、お互いを知ることで、そこからまた、いい人たちとのつながりができます。  インターネット、特にSNSは便利ですし、うっかり人間関係が築けたと思いやすいツールですよね。でも現実世界で熱をもった言葉を発して、相手の体温を感じて交流しないと上っ面の関係しかできないと思うんです。  生きていればこの先、ひとり親ではなくなる可能性もあるし、すべてを消極的に考えるのではなく、自ら動くということが大切だと伝えたいですね。 ライン プロフ写真有限会社マザール 代表/企画屋執筆家 あべみちこさん プロフィール 東京都生まれ、神奈川県横浜市在住。外資系広告代理店の営業職を経て、コピーライターに。電通系列子会社等広告業界12年の基礎を土台に、妊娠・子育て支援媒体のベンチャー企業へ転職し、2年間編集長を務める。2004年春に「お母さんを社会に混ぜる。価値観の違いをつなげ、混ぜる」というコンセプトで母親対象のコト・モノ・ヒトをうみだす企画制作会社としてマザールを設立。2013年、企画屋執筆家と名乗る。今夏、仕事の仕方およびライフスタイルを一新するつもりで緑区霧が丘の自宅の一角を改装し、事務所を併設、移転。 ■マザール:http://www.motheru.jp/ 著書に「ものがたりレシピ」(幻冬舎)、「たべものかるた」(ほるぷ出版)、 監修に「赤ちゃん絵本ノート」(発行:マーブルトロン/発売:中央公論新社)、 取材・構成に「絵本アルバム」(ほるぷ出版) がある。  

>> ひとり親style 第4回 出会って、食べて、笑って、歌って。楽しみながら歩みたいな。 武あゆみさん(株式会社ラボ教育センター「ラボ・パーティ」/チューター)